日本遊戯療法学会第30回大会

大会日程

大会タイムテーブル


【教育講演】※一般無料公開

8月30日(土) 10:00~12:00(ハイブリッド:対面+Zoom)

テーマ:「マヤ文明と象徴表現」
講師:青山和夫(茨城大学)
指定討論:吉川眞理(学習院大学)
司会:金丸隆太(茨城大学)

マヤ文明の遺跡の発掘作業から見つかる遺構や遺物に刻まれた象徴表現に焦点を当て、その意味を探ります。青山和夫先生は、長年にわたりマヤ文明の研究に取り組まれ、現在も科学研究費の学術変革領域研究(A)の代表者として、大規模の発掘研究を進められています。指定討論者の吉川眞理先生には、象徴表現が現代の心理療法や遊戯療法においてどのように解釈され、活用されるかについて解説いただく予定です。時代や文明を超えた自己表現について考える機会となることでしょう。

講師紹介

青山和夫

茨城大学人文社会科学部教授。東北大学文学部考古学科を卒業後、ピッツバーグ大学で修士号と博士号を取得(人類学)。1986年以来、ホンジュラス、グアテマラとメキシコでマヤ文明の調査を続け、アグアテカ遺跡やセイバル遺跡、アグアダ・フェニックス遺跡での発掘作業を通じて、マヤの政治経済組織や日常生活、戦争の痕跡を解明。メキシコでマヤ文明最古・最大の公共建築を発見し、成果を2020年に「Nature」に発表。『マヤ文明の戦争―神聖な争いから大虐殺へ』(京都大学学術出版会)、『マヤ文明-密林に栄えた石器文化』(岩波新書)など著書多数。日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞受賞。
吉川眞理

学習院大学文学部心理学科教授。京都大学教育学部を卒業後、同大学院で修士号・博士号を取得(教育学)。1991年より山梨大学教育学部、2001年より学習院大学文学部心理学科にて教鞭をとる。臨床心理士、公認心理師、ユング派分析家。日本心理臨床学会第43回大会実行委員長(2024)。日本ユング心理学会では国際交流委員として活動。主な著書に『〔新訂〕精神分析とユング心理学―心の深層へのアプローチ』(共著、放送大学教育振興会)、主な論文に『諏訪大社ミシャグジ儀礼に関する分析心理学的考察―上社大祝即位儀礼について』(「ユング心理学研究」第2巻)など、ユング心理学の象徴的アプローチを通して心の探求に取り組む。

【基調講演】

8月30日(土) 13:45~14:45(ハイブリッド:対面+Zoom)

テーマ:「遊戯療法と精神療法 - その懸け橋としての愛着理論」
講師:岡野憲一郎(本郷の森診療所院長・京都大学名誉教授)
司会:金丸隆太(茨城大学)

岡野憲一郎先生に本学会でご講演頂くのは珍しいことかも知れません。先生は精神分析家として、成人患者の治療と研究に尽力されています。特に解離性障害について造詣が深く、その領域で先生のご著書を読まれた方も多いことでしょう。先生は遊戯療法の専門家ではありませんが、先生の実際の診察では、解離性障害の患者の幼児人格を通し、事実上たくさんの遊戯療法的なかかわりをしておられているとのことです。そういったご経験から、愛着理論を用いながら遊戯療法についてご講演頂きます。

講師紹介

岡野憲一郎

本郷の森診療所院長、京都大学名誉教授。東京大学医学部を卒業後、同大学で医学博士号を取得(医学)。米国で臨床活動と精神分析家としてのトレーニングを積み、米国精神科専門認定医の資格を取得。帰国後、国際医療福祉大学教授を経て京都大学大学院教育学研究科臨床心理実践学講座教授。日本精神分析学会認定精神療法医、日本精神神経学会認定専門医。米国精神科専門医、国際精神分析協会正会員。『解離性障害―多重人格の理解と治療』(岩崎学術出版社)、『治療的柔構造:心理療法の諸理論と実践との架け橋』(岩崎学術出版社)、『解離新時代―脳科学、愛着、精神分析との融合』(岩崎学術出版社)など著書多数。

【研究発表I】

8月30日(土) 15:00~17:00(対面)


【ワークショップ】

8月31日(日) 9:30~12:00(対面、ハイブリッド、オンライン)

※原則として会場参加の方は対面またはハイブリッド、オンライン参加の方はハイブリッドまたはオンラインのワークショップを選んでご参加下さい。


テーマ「発達障害児との遊戯療法技法」
講師:安島智子(特定非営利法人このはな児童学研究所理事長)
形式:対面
講師からのメッセージ「発達障害児の特性に応じたかかわり方の技法についてアクションアプローを通して体験的に学び、また自閉症児との遊戯療法の中で考案された誘発線を用いて絵を描き物語をつくる技法を体験していただくことを計画しています。A4紙3枚、黒のサインペン、クレヨンをお持ちください。」

テーマ「乳幼児期における愛着と感情調整の重要性」
講師:國吉知子(神戸女学院大学名誉教授・Sophia next心理教育研究所所長)
形式:対面
講師からのメッセージ「PCIT(親子相互交流療法)とは、遊戯療法と行動療法を融合した、親子遊びをしている養育者にその場でコーチングを入れていくユニークな心理教育的セラピーですが、子育てに悩む養育者に大きな効果を挙げています。PCITは元来2歳半~7歳が適用年齢ですが、応用版として1歳~2歳半までの「乳幼児版(赤ちゃん版)」が、2018年に開発されました。このPCIT赤ちゃん版では、特に子どもの「愛着形成と感情調整」に重点が置かれています。本講座では、赤ちゃん版PCITを参照し(スキルもご紹介しつつ)、乳幼児期における愛着と感情調整の重要性について、いま一度考える時間にしたいと思います。皆様のご参加をお待ちしております。」

テーマ「心に浮かんでくるイメージをプレイフルに表現してみる」
講師:倉光修(倉光カウンセリングオフィス・東京大学名誉教授・放送大学名誉教授)
形式:対面
講師からのメッセージ「このワークショップでは、私が最近提唱しているMPSというアプローチ(mindfulな自己認知、playfulな自己表現、spiritualな自己実現を志向する統合的心理療法)のエッセンスを体験していただければと思っています。具体的には(実は何も特別なことはないのですが)、参加者の皆様が、その場で、心の中に(とくに無意識的な領域から)浮かんでくるイメージや体感をマインドフルに把握し、それを(ときには概念言語以外の媒体も用いて)プレイフルに表現しあい、さらに、その場での交流を通して、一人一人がこれからの人生で実現したいと思う(時々刻々変化しうる)スピリチュアルなイメージを見いだせればと願っています。何はともあれ(友は何あれ)、皆様とお目にかかるのを楽しみにしています。」

テーマ「遊戯療法の基礎と根幹」
講師:山中康裕(京都ヘルメス研究所・京都大学名誉教授)
形式:ハイブリッド(対面+Zoom)
講師からのメッセージ「遊戯療法は、遊ぶだけなんだから、簡単だと思って居る人が多い。遊ぶのは、子どもの方で、セラピストは見守るだけだ、と思っている可能性がある。子どもが、真の意味で遊べているのなら、それでいい。真の意味でとは、子どもが、まことの意味で自由を得たら、間違いなく、心の底に封じ込められた心の秘密をさらけ出して、それらから自由になれるからだ。私は、直ちにそういうことを実現する方法を見出した。MSSM法である。こどもたちは、いとも自由に、遊びの世界に入り込み、全く気兼ねなく、自らの問題を明るみに出し、其処から自由になっていく。第一、彼らは、それがしたくて、毎回、自分から進んでくるようになることで、そのことは明らかなのだ。」

テーマ「アニメを通して思春期のこころを考える」
講師:川部哲也(大阪公立大学)
形式:オンライン(Zoom)
講師からのメッセージ「今やアニメは子どものためだけでなく、大人も多くの人が視聴しているジャンルである。映画館に行っても必ず何かのアニメの映画が上映中であることからも、その存在感の大きさが窺える。一昨年の日本遊戯療法学会第28回大会におけるシンポジウム「アニメやマンガから浮かび上がるこころ」にて、私はアニメ「中二病でも恋がしたい!」を素材として、思春期のこころのありようについて検討を行った。今回のワークショップはその続編として、主にアニメやライトノベルの歴史を参照しつつ2000年代から2020年代に至るまでの思春期のこころの移り変わりを検討する。思春期の自意識のありようについて、参加者とともに考えを深めていきたい。」

テーマ「愛着に課題を抱える自閉スペクトラム症状態の子どもとの遊戯療法について考える」
講師:千原雅代(天理大学)
形式:オンライン(Zoom)
講師からのメッセージ「近年、発達障害の診断が増えていますが、なかには発達早期のコミュニケーションのずれから自閉スペクトラム状態になっている子ども、診断的には抑制型愛着障害と言われる一群のこどもたちがいます。このワークショップではそのような子どもとの遊戯療法の事例をとりあげ、生得的な要因の強い自閉スペクトラム症と上記子どもたちたちとの違いについて概観し、アセスメントの留意点をとりあげるほか、実際の事例検討をとおして、これらの子どもたちの心がどのように育っていくのか、その成長を理解する視点を提供しつつ、事例を検討したいと思います。」

テーマ「プレイセラピーにおけるシンボリックな表現と事例のテーマをめぐって」
講師:弘中正美(山王教育研究所)
形式:オンライン(Zoom)
講師からのメッセージ「このWSでは、プレイセラピーにおける遊びのシンボリックな表現と事例の流れの中で展開するテーマに焦点を当てて、治療的な関わりとして何が重要であるのかに関する検討を行いたい。前者は遊びに備わる刺激的で魅力的な現象であるが、時にセラピストを迷わすものでもある。後者はセラピーの進行および子どもをめぐる情報の蓄積に伴って次第に現れるものであり、セラピストはテーマを発見しそれを育もうとする。講師の自験例に基づいて一通り話題を提供した後、受講者が遊びのシンボリックな表現・事例のテーマに関して自分が体験したことを自由に語る時間を設けることによって、検討の場を共有していきたい。」

テーマ「遊戯療法へのユング派アプロ―チ;プレイセラピーをアクティブイマジネーションの実演として理解する試み」
講師:吉川眞理(学習院大学)
形式:オンライン(Zoom)
講師からのメッセージ「ユング派の分析心理学では、イメージを用いた表現療法を重視していますが、それはユング自身のアクティブ・イマジネーションとその作品化(赤の書)に端を発しています。遊戯療法は、こどもの自発的なイメージが織りなす劇(Play)的表現ととらえることができ、それは子どもたちのアクティブ・イマジネーションの実演劇としても理解できます。「アクティブ・イマジネーション」がもつ治療的作用を理論的に解説しつつ、遊戯療法事例をアクティブ・イマジネーションの実演としてとらえるとき、そこでの治療者の参与のあり方についても検討します。子どもの豊かなイマジネーションによる劇として進行したプレイセラピー事例を募集します。」

【会員集会】

8月31日(日) 13:15~14:15(ハイブリッド:対面+Zoom)


【研究発表II】

8月31日(日) 14:30~16:30(対面)


臨床心理士の資格更新ポイントについて

「教育講演」「基調講演」「ワークショップ」の全てに参加された方は、以下の通り臨床心理士の資格更新ポイントを得られるように申請予定です。
・本学会会員の方:3群[関連学会への諸活動への参加・年次大会]
・本学会非会員の方:4群[ワークショップ型研修会]